留学に必要なSAT®とはどんなテストなのか?
SAT®とは、アメリカの高校生が受ける、大学進学のための標準テスト(Standardized Test)です。「エスエイティ」といいます。
アメリカの大学は入学審査において高校の成績やエッセー(自己アピールの作文)、推薦状などとあわせて、SAT®のスコアの提出を求めています。
このページではSAT®のテストの内容と、それがアメリカの大学の入学審査でどのように評価されるのか、また留学生でもSAT®を受けなければならないのか、詳しく解説します。
もくじ
SAT®とは?
SAT®とは、アメリカの高校生が受ける標準テスト(全米共通のテスト)で、民間の非営利機関であるカレッジボード(College Board)が運営しています。1926年に初めて実施されたもので、アメリカの大学の多くは、高校の成績やエッセーなどと共に、SAT®のスコアを出願書類の1つとして提出を求めています。2020年度の高校卒業者のうち、220万人がこのテストを少なくとも1回は受験したそうです(カレッジボードによる)。
アメリカは高校までが義務教育です。そのため生徒によって、高卒の時点での学力が大きく異なります。同じオールAをとった高校生でも、高校のレベルによっては学力に大きな差が生じることにもなります。
そこで全米の高校生の標準に照らして学力を測るテストとして、SAT®がその役割を果たしています。SAT®が「標準テスト」といわれるのは、そのためです。
SAT®のほかに、高校生の学習達成度を測るテストとして、ACT®(American College Test:エイシーティ)という標準テストがあります。アメリカの高校生は、SAT®かACT®のいずれかを受けて、そのスコアを出願大学に提出します。これらはいずれも、とくに留学生を対象としているものではなく、あくまでもアメリカの高校生が受けることを想定してつくられています。
なお、英語を母語としない留学生が受ける標準テストの代表的なものが、TOEFL®テストです。
SAT®はアメリカの大学入試なのか?
アメリカの大学は、書類審査によって合否を決めます。高校の成績・エッセー・推薦状・課外活動など、さまざまな書類によって、さまざまな角度から出願者を評価します。SAT®もそれら書類のうちの1つです。
SAT®が測るのは、
- 高校で学んだこと
- 大学で成功するために必要なこと
とされています。ここでいう「高校」「大学」はいずれも、特定の学校を指すわけではありません。あくまでも一般的な意味での高校であり、大学です。
したがって、SAT®が何点以上(以下)あれば、どこかの大学に必ず合格(不合格)するというわけではありません。全米の標準テストであるとはいえ、日本の共通テストと同じものだと考えるのは大きな間違いです。
では、個々の大学が実施するテストがあるかといえば、それもアメリカにはありません。アメリカの大学が入学審査において合否を決める材料は、一般的には以下の項目です。これらを総合的・多角的に評価して、合否を判断するわけです。
- 高校の成績
- エッセー(自己アピールの作文)
- 推薦状
- SAT®またはACT®のスコア
- TOEFL®テストのスコア(留学生の場合)
- 課外活動の内容と実績
- 面接
SAT®のスコアが少しくらい低くても、他の項目がすぐれていれば合格のチャンスが高まりますし、逆にSAT®でいくら高いスコアをとっても他の項目に魅力が欠けていれば不合格になります。
そしてなんといっても、最も重視されるのが、高校の成績です。したがってアメリカの大学に合格したいのであれば、まず日本の高校でいい成績をとることが何より肝心です。
得点を競い合う日本の大学入試を基準にすると、このような入学審査はわかりにくいかもしれませんが、アメリカの大学は学力だけでなく、出願者1人ひとりの人間としての魅力や個性をしっかり評価しようとするのです。アメリカの大学に偏差値がないのも、そうした事情を反映しています。
なおSAT®が測るという「大学で成功するために必要なこと」とは、思考力(thinking skills)です。暗記事項が問われるわけではありません。
SAT®の概要
SAT®は、
- Evidence-Based Reading and Writing(読解)
- Mathematics(数学)
これら2つの部分(セクション)から成り立っています。
このうち、読解(96問)と数学(58問)それぞれのセクションが200~800点の範囲で採点されます。両方のセクションで満点をとると1600点です。
SAT®の試験時間は3時間です。
SAT®の構成
SAT®の各セクションのテスト時間と問題数は以下の通りです。
セクション | 時間 | 問題数 | |
---|---|---|---|
Evidence-Based Reading and Writing | Reading | 65分 | 52問 |
Writing and Language | 35分 | 44問 | |
Mathematics | 80分 | 58問 | |
合計 | 180分 |
Evidence-Based Reading and Writing(読解)で問われること
語い力、読解力、推論力が問われます。いわゆる「英語」のセクションですが、外国語としての英語ではなく、国語としての英語が扱われますので、ごく普通の日本の高校生には、かなりむずかしいものになっています。
Mathematicsで問われること
演算、代数、幾何学、統計、確率の分野の理解度が測られます。このセクションは、数学の用語さえある程度おさえておけば、日本人でも高スコアを狙えます。だいたい日本の中3〜高1くらいに習うレベルの問題が多く出題されます。過去問をたくさん解けば、だいたいの傾向がつかめるはずです。なお、電卓の使用が許されています。
どれだけのSAT®スコアが必要なのか
SAT®を運営するカレッジボードによると、2020年に高校を卒業したSAT®の受験者の平均点は、
Evidence-Based Reading and Writing: | 528点 |
Mathematics: | 523点 |
ということです。
名門大学に入るような高校生のSAT®スコアに目を向けますと、さすがにハイスコアが目立ちます。以下に載せるのは、ハーバード大学の入学生たちのSAT®スコアの分布です。ほとんどの学生が満点近くをとっていることがわかります。
ハーバードの入学生のSATスコア分布
もう1校、日本人に人気のUCLAの入学生のスコア分布を見てみましょう。ややスコアにバラつきがあることがわかります。カリフォルニアの州立大学は、州内の高校生に対しては、高校の成績と標準テストのスコアによって合否を決めるシステムをとっているので、そのような事情が、スコア分布にも現れているのかもしれません。
UCLAの入学生のSAT®スコア分布
なお、SAT®は複数回受けられます。アメリカの高校生はだいたい2回受けるのが一般的です。2回目のほうがスコアは高くなるようですが、3回以上受ける高校生はあまりいません。それ以上受けてもスコアの上昇は見込めないというのが一般的な考えかたです。
SAT®の受験は日本人留学生にも必須か?
アメリカの大学の入学審査においては、ほとんどの大学が出願者にSAT®のスコア提出を課していますが、留学生に対しては任意または要求しない大学も少なくありません。また編入希望者にはSAT®を課さないという大学も多くあります。
実際に、日本からアメリカの大学に留学している人の多くは、SAT®を受けていません。とくに英語のセクションはなかなか太刀打ちできませんから、受けるメリットもそんなにないのです。
ただ、名門大学になると、留学生にもSAT®スコアの提出を求める場合があります。ハーバードがそうです。ハーバードは、TOEFL®テストやIELTS™のスコアは求めていません。留学生に対しても、アメリカ人と同等の英語力を期待しているということです。
SAT®の受験手続と受験料
SAT®は日本でも受験できます。申し込みはカレッジボードのウェブサイトからオンラインで行い、受験料もオンラインでクレジットカードにて支払います。
受験料は、アメリカで受ける場合は55ドル、日本で受ける際にはこれに加えて53ドルです。
SAT®は年に5、6回実施され、主要都市のいくつかのインターナショナルスクールがテスト会場になります。その数は限られていて、だいたい10〜20か所です。最近は定員がすぐにいっぱいになってしまうことも多いようです。早めに申し込みすることを心がけましょう。
まとめSAT®は留学生が身近に感じるテストですが、アメリカの大学はさまざまな書類を多角的に審査して合否を決めますので、SAT®のみに集中して「受験勉強」することはありません。出願の時点での本来の学力をもって、自然体でSAT®の受験に望むのが、あるべき姿勢だといえるでしょう。「高校でしっかり勉強していればSAT®でよい結果を出せる」とカレッジボードは述べています。
ワンポイント
アメリカの大学が入学審査項目の一つとして提出を求めているSAT®が、2020年のコロナ禍において、このスコアの提出を任意とする大学が増えたため、SAT®の受験者も減少しています。2021年以降も、引き続きSAT®のスコア提出を求めないとする大学も多く、このテストはいわば岐路に立っているといえます。一方で、ハイスコアを狙えるのであれば、とりあえず受けたほうがいいという意見もあります。
栄 陽子留学研究所では、SAT®でハイスコアをとって名門大学への留学を果たした数々の実績をもっています。アメリカの高校生と同じ土俵で勝負したい! という人はぜひ留学相談をお受けください。