留学生の英語テストはIELTS™とTOEFL®テスト、どちらを受けるべきか?
IELTS™とTOEFL®テスト、どちらを受けるべきか?
アメリカの大学に出願する際に、留学生の英語力を示すために提出を求められるテストとして、
・IELTS™
・TOEFL®テスト
というこれら2つのテストがよく知られています。
アメリカの大学は、IELTS™もしくはTOEFL®テストいずれかのスコアを提出することを求めています。両方のスコアを提出する必要はありません。
となると、留学生にとって、より高スコアをとりやすいほうのテストを受けるほうが、合格の可能性を高められるということになります。
そこでこのページでは、IELTS™とTOEFL®テストを比較し、アメリカの大学への留学を希望する人がよりよいスコアをとりやすいのはどちらのテストなのか、考えてみたいと思います。
まずは、それぞれのテストについて、簡単に紹介することから始めましょう。
IELTS™とTOEFL®テストの概要
IELTS™とは、英語圏の国の大学に留学したい人・移住したい人の英語力を測るテストです。International English Language Testing Systemの略で、「アイエルツ」といいます。ブリティッシュカウンシル、ケンブリッジ大学英語検定機構、IDP:IELTSオーストラリアの3者が共同運営していて、日本では日本英語検定協会が提供しています。
TOEFL®テストは、アメリカの大学・大学院に留学したい人の英語力を測るテストです。Test of English as a Foreign Languageの略で、「トーフル」といいます。Educational Testing Service(ETS)という、非営利の教育系財団が運営しています。
いずれも、世界中で受けられるテストです。IELTS™は年間300万人以上の人が受験しています。TOEFL®テストの受験者数は公開されていませんが、やはりとてもポピュラーなテストです。いずれも、日本の大学受験で導入が予定されている民間試験として採用されています。
それぞれのテストの詳細については、以下のページを参照してください。
IELTS™とTOEFL®テストの比較
IELTS™とTOEFL®テストを比べると、およそ以下の通りです。
IELTS™ | TOEFL®テスト | |
---|---|---|
テスト時間 | 約2時間45分 | 約3時間 |
受験料 | 25,380円 | 235ドル |
受験できる場所 | 全国16の都市 | 全国およそ80箇所 (2020年末までは自宅受験も可) |
解答形式 | 紙もしくはPC | 基本的にインターネット |
テスト日程 | ほぼ毎週 | 月に3〜6回 |
スコア | 1.0〜9.0 | 0〜120 |
テスト内容 |
|
|
扱われる英語 | 世界の英語圏各地の英語 | 基本的にアメリカ英語 |
出題されるトピック | 大学生活(教科書、講義など)、日常生活、ビジネスシーン | アメリカの大学・大学院生活 |
解答方法 | ライティングとスピーキング以外は、選択肢もしくは記述式 | ライティングとスピーキング以外は、すべて選択肢 |
スコアの有効期限 | 2年間 | 2年間 |
リスニング
IELTS™のリスニング・パートでは、30分で40の問いに答えます。日常会話や大学における講義やディスカッションなどが題材になります。世界各地のアクセントが用いられます。
TOEFL®テストのリスニング・セクションでは、41〜57分で28〜39の問いに答えます。アメリカの大学における講義や会話が題材です。
リーディング
IELTS™のリーディング・パートでは、60分で40の問いに答えます。アカデミックな長文と、日常や仕事にかかわる短文が素材です。
TOEFL®テストのリーディング・セクションでは、54〜72分で30〜40の問いに答えます。700単語ほどの文章をいくつか読んで、それぞれに対する設問に答えます。素材は基本的にアメリカの大学の、入門レベルの科目の教科書です。
ライティング
IELTS™のライティング・パートでは、60分で2つの課題に取り組みます。データの応用について書く課題(150単語以上)と、自分の意見を論じる課題(250単語以上)です。
TOEFL®テストのライティング・セクションでは、50分で2つの課題に取り組みます。文章を読み、講義を聞いて書く課題と、自分の経験や意見を書く課題です。単語数はだいたい250〜300くらいです。
スピーキング
IELTS™のスピーキング・パートでは、面接官と直接会って、1対1で面接をします。紙で受ける場合でも、PCで受ける場合でも同じです。このパートの試験日は、他のパートと同日もしくはその前後1週間以内です。
TOEFL®テストのスピーキング・セクションでは、PCに向かって話します。ビデオ通話等による相手とのやりとりが発生することはありません。
ELTS™とTOEFL®テストの違い
以上に見たように、IELTS™とTOEFL®テストは、似ているところもあれば、異なっているところもあります。とくに大きな違いは、
- IELTS™は紙またはPCで受けるのに対して、TOEFL®テストはインターネットで受ける
- IELTS™では大学生活のほかに日常生活やビジネスシーンが題材になるのに対して、TOEFL®テストはアメリカの大学生活が題材になる
- IELTS™のスピーキングでは面接官と直接会って話すのに対して、TOEFL®テストはPCに向かって話す(リアルタイムでやりとりすることはない)
- IELTS™で扱われる英語は、イギリス英語を含む世界各地の英語であるのに対して、TOEFL®で扱われるのは基本的にアメリカ英語に限られる
これら4点に集約されます。
このことを踏まえると、もし留学先がアメリカであるならば、IELTS™よりもTOEFL®テストのほうが向いているようにも見えます。しかし実際はアメリカの3,000以上の大学がIELTS™を認めていますので、「留学先がアメリカならTOEFL®テスト」とはいえません。一方で、イギリスやオーストラリアへの留学をめざすならIELT™を受けるというのは理にかなっています。
受けやすさ、という点からすれば、IELTS™のほうが受けやすいといえます。TOEFL®テストのほうは、申込サイトがすべて英語で書かれていますので、申込そのもののハードルが高いからです。IELTS™のほうは、英検協会のウェブサイトが日本語で申込を受け付けています。その分、敷居が低いのは間違いありません。スコアも、IELTS™のほうがTOEFL™テストよりシンプルです。
スピーキングを別の日に受けなければならないかもしれない、というのはIELTS™の難点といえますが、対面で話すほうが、PCに向かって一方的に話すよりも、やりやすいはずです。
イギリス英語かアメリカ英語か、の違いは気にしなくていいと思います。リスニングでは、それなりにゆっくり喋ってくれますので、いずれかの違いが正答率に大きく影響することはありません。
タイピングが苦手な人は、紙と鉛筆で受けるIELTS™のほうが馴染みやすいようです。ただ今後IELTS™もコンピュータで受けるのが主流になるはずですので、できるだけタイピングを練習しておくといいでしょう。アメリカの大学に留学すると、作文を手書きでするということはありません。リーディングは、PCよりも紙のほうが読みやすいという人が多いようですね。
テスト対策についていえば、英語が苦手な人は、まずは基礎を復習することをおすすめします。それなりに英語に自信がある人は、過去問を解いたり、インターネットに載っている練習問題を解いたりするのもいいでしょう。IELTS™の勉強がTOEFL®テストに役に立たないといったことはありません。
IELTS™とTOEFL®テスト、どちらが留学に有利か?
さて、肝心の「どちらが有利か?」については、確実な答えというものはありません。しかし、ある程度の傾向は見られます。
まず、英語が苦手な人にとって、両者の違いはそんなにありません。両方とも、それなりにむずかしいテストです。一方で、英語ができる人からすると、TOEFL®テストよりもIELTS™のほうが高スコアを出せることが多いようです。
なお、2019年の、日本人のTOEFL®スコアの平均は72点です(ETSより)。これをIELTS™のスコアに換算するとだいたい6.0になりますが、実際の平均は5.6です(Studyportals.comより)。とすると、必ずしもIELTS™のほうがTOEFL®テストよりもいいスコアをとりやすいとはいえません。
TOEFL®テストは、一時期、その受けにくさやテスト時間(かつては4時間に及ぶものでした)などから、かなりの不評を買い、IELTS™に人気を奪われたような感がありました。その後、とくに受験者の便宜という点で改善を重ねながら、いまに至っています。
とくに2020年のコロナ感染症の拡大防止のために自宅で受験できるように取りはからったのは、iBT®のTOEFL®テストならではの快挙です。ただ自宅で受けるためにはいろいろとややこしい手続きがあって、必ずしも好評でもありません。
もちろんIELTS™も、ますます改善に力を入れていくことでしょう。今後も、これらのテストが拮抗しながら、受験者の獲得競争に拍車がかかっていくと思われます。いまは、TOEFL®テストの挽回なるか? それともIELTS™が差を広げていくか? というところです。
ワンポイント
IELTS™とTOEFL®テスト、どちらを受けるべきか? どちらが簡単か? どちらが留学に有利か? こういう質問をよく受けますが、残念ながら、確実にどちらということはできません。
英語が得意な人(英検2級くらいのレベルの人)は、それぞれの公式サイトで、無料のサンプルテストを受けてみるといいでしょう。
大切なことは、留学するからといってテストに過度にとらわれないこと。そして、もしテストで結果が出せなかったとしても、留学をあきらめないこと。アメリカの大学は、出願者1人ひとりの個性や魅力をいろいろな角度から評価してくれます。英語力が、留学のすべてではありません。ぜひ、自分自身の魅力を見いだして、前向きに留学に踏み出してください!