アメリカの大学の成り立ち
アメリカの大学への留学をめざすにあたっては、日本と異なるアメリカの大学のありかたを理解することが大切です。ここではアメリカの大学教育のルーツともいえる「リベラルアーツ教育」、州立大学のありかた、そして現代のアメリカ教育について、その歴史的な成り立ちを解説します。
(1)アメリカの大学の原点:リベラルアーツ
アメリカの大学はイギリスから渡ってきたプロテスタントの人たちが1636年に創立した牧師養成のハーバード大学から始まります。
町や村が発展するにつれ、ハーバード大学は、将来、村長や町長になるようなリーダーを養成することに主たる目的を定めることになり、教養を幅広く身につけ、決断力を養い、リーダーシップをとれる人間になる教育をするようになりました。これをリベラルアーツ教育といい、ここにリベラルアーツ・カレッジが誕生します。
ハーバード大学は、その後、医学や法学などの専門的な分野をどんどん付け足していき、いまの大きなUniversityになりました。
アメリカが国家になったのは1776年ですから、ハーバード大学はもちろん私立です。建国の140年前からリーダー養成の教育を行っていたことになります。
ハーバードはUniversityになりましたが、いまでも全米に約600校のリベラルアーツ・カレッジがあります。リベラルアーツ・カレッジは小規模で、一人ひとりの学生に対するサポートもしっかりしているため、留学にも適しています。
(2)州立大学の成り立ち
アメリカに州立大学ができたのは1789年のことです。リーダー養成を目的として創立された私立大学と違い、新しくアメリカ国民になる移民も含めて、州民として一定の教育を行い、また州の発展に尽くせる人々を養成しようとしました。当時は農業・畜産など第一次産業の時代であったため、州立大学は農学・畜産、後に工学など実務的分野を発展させました。
州民に等しく大学教育を与えるということで州内に同じような名前の州立大学をいくつも創設し、日本の都立高校や県立高校と同じシステムができあがりました。すなわち、州内でトップクラスの学生を入学させる大学、普通レベルの学生のための大学、成績が低くても入学可能な大学などです。「公平・平等」が州立大学の根本的な理念です。
したがって、アメリカの州立大学を、州の名前が付いているからといって、日本の国立大学と同じように考えることはできません。
(3)アメリカの大学のいま
現在のアメリカには、州立大学やリベラルアーツ・カレッジなどを含めて、4000以上の大学が門戸を開いています。リベラルアーツ・カレッジとして創設された大学の中には、ハーバード大学のように、新しい専門分野を加えていって、おもに大学院レベルの研究に力を入れている総合大学として発展してきた大学もあります。また、あえて大きな総合大学になる道を選ばず、小さなリベラルアーツ・カレッジとしてすぐれたリーダー養成を実践している大学もたくさんあります。ほかにも、アートや音楽の専門大学や、工科大学、軍の仕官養成大学などがあります。望めばだれでも最低限の教育・職業訓練を受けられるコミュニティ・カレッジ(二年制の公立大学)も、全米の各州・各地域に存在しています。
「多様性」は、いまのアメリカの大学のありかたをよく表しているキーワードです。あらゆる目的、あらゆるレベルに応じ、あらゆる分野にわたって学べるのが、現在のアメリカの大学の姿といえるでしょう。留学生も多様性に貢献する存在としてアメリカの大学に歓迎されます。